医療費控除がある年のふるさと納税:確定申告での併用と、上限が下がる仕組み

医療費控除を受ける年はワンストップ特例が使えず、ふるさと納税も確定申告でまとめて申告します。申告書のどの欄に書くのか、必要な書類は何か、そして医療費控除で課税所得が下がるとふるさと納税の控除上限も下がるのはなぜかを、国税庁の公開情報をもとに整理します。

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医療費がかさんだ年に「医療費控除も受けたいが、ふるさと納税のワンストップ特例も出してしまった」という状態になることがあります。この2つは同じ年のなかで競合します。

結論から書くと、医療費控除を受ける年は、ふるさと納税も確定申告でまとめて申告します。そして、医療費控除を受けるとふるさと納税の控除上限は下がります。この記事では、その手続きと理由を国税庁の公開情報をもとに整理します。

ワンストップ特例そのものの条件は、ふるさと納税ワンストップ特例の条件と期限で扱っています。

なぜ併用できないのか

ワンストップ特例は、もともと確定申告をする必要がない人が使える仕組みです。国税庁は、確定申告が不要な給与所得者でふるさと納税先が5団体以内の場合にワンストップ特例制度を利用できるとしたうえで、5団体を超える場合や確定申告が必要な場合には、ふるさと納税を行った年分について確定申告をする必要があるとしています(出典: 国税庁 No.1155 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm )。

所得税の医療費控除を受けるには、確定申告書を提出します。国税庁は、医療費控除に関する事項などを記載した確定申告書を提出し、医療費の領収書から作成した「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付するよう案内しています(出典: 国税庁 No.1120 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm )。

つまり医療費控除を受けると決めた時点で、その人は「確定申告をする人」になります。ワンストップ特例の前提から外れる、ということです。

すでに申請書を出していても間に合う

ここが実務で重要なところです。国税庁は、医療費控除を受けるなどのために確定申告や個人住民税の申告をする方も含め、確定申告をする方がふるさと納税について寄附金控除の適用を受けるためには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告をする必要があるとしています。そのうえで、「確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります」と案内しています(出典: 国税庁 No.1155 同上)。

つまり、ワンストップ特例の申請書を出したあとでも、確定申告で申告し直せば控除は受けられます。 ただし救済のされ方が「特例が無効になり、確定申告のほうで控除される」という形なので、確定申告の側でふるさと納税を寄附金控除額の計算に含めなければ、その控除は受けられません。

申請書を出したから大丈夫、という考え方が最も危険です。確定申告をする以上、ふるさと納税は自分で申告書に書く必要があります。なお、確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効となるため、特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算します。

確定申告での書き方

国税庁は、ふるさと納税について、確定申告書第二表の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄に、ふるさと納税として寄附された金額も必ず記載する必要があると案内しています(出典: 国税庁 No.1155 同上)。

国税庁は、この欄などが記載されていない場合には、個人住民税の賦課決定の際に控除されないこともあると注意を促しています(出典: 国税庁 No.1155 同上)。

必要な書類

寄附金控除を受けるには、確定申告書に次のいずれかを添付または提示します(出典: 国税庁 No.1150 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm )。

  • 寄附先の団体から交付される寄附金の受領証(領収書)
  • ふるさと納税の場合は、国税庁長官が指定した特定事業者が発行する、年間の寄附額が記載された証明書でも代えられます

寄附先が多い年は、後者のほうが枚数を減らせます。どちらを使うかは、利用しているポータルサイトが特定事業者の指定を受けているかによります。

医療費のほうは、「医療費控除の明細書」の作成と添付です。医療費通知がある場合は、それを添付することで明細書の記載を簡略化できます(出典: 国税庁 No.1120 同上)。

医療費控除とふるさと納税を同じ確定申告で処理する年など、申告書の作成を税理士に依頼したい場合は、税理士紹介サービスを利用する方法もあります。依頼先を探す手段のひとつとして、税理士紹介センタービスカス(運営:株式会社ビスカス)は、確定申告に対応する税理士を無料で紹介し、紹介サービスの利用に費用はかからないと公式サイトで案内しています。税理士に依頼する際は税理士に支払う費用が別に発生するとも案内されているので、依頼内容ごとに見積もりで確認してください。

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医療費控除を受けると、ふるさと納税の上限は下がる

ここが見落とされやすい論点です。順番に見ます。

医療費控除の計算

国税庁によると、医療費控除額は「実際に支払った医療費の合計額」から保険金などで補填される金額を差し引き、さらに一定額を引いた金額で、最高200万円が上限です。差し引く一定額は通常10万円ですが、その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセントの金額になります(出典: 国税庁 No.1120 同上)。

対象は「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費」で、未払いの医療費は現実に支払った年の医療費控除の対象になります(出典: 同上)。

ふるさと納税の控除の内訳

一方、ふるさと納税の控除は3つの部分に分かれています(出典: 国税庁 No.1155 同上)。

区分計算
所得税(ふるさと納税額 − 2,000円)を所得控除(寄附金控除)とし、所得税率(0〜45%)を適用。控除対象は総所得金額等の40%が上限
住民税(基本分)(ふるさと納税額 − 2,000円)× 10% を税額控除
住民税(特例分)上記で控除しきれなかった額を控除。所得割額の20%が限度

「所得割額の20%が限度」 という一文が、上限を決めています。

なお、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」では、特例控除額の控除限度額を、個人住民税所得割額の2割と定額(道府県民税77万2千円、市町村民税115万8千円。指定都市に住所を有する者の場合は38万6千円、154万4千円)のいずれか低い金額とし、令和10年度分以後の個人住民税について適用するとしています(出典: 財務省 令和8年度税制改正の大綱 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_01.htm )。

つながり

医療費控除は所得控除なので、課税所得を減らします。個人住民税にも医療費控除があり(出典: 調布市 https://www.city.chofu.lg.jp/030010/p014021.html )、所得割は所得金額から所得控除を引いた課税所得金額に税率を掛けて求めるため(出典: 総務省 個人住民税 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html )、課税所得が減れば、住民税の所得割額も減ります。所得割額が減れば、その20%である特例分の限度額も減ります。

つまり、

医療費控除で所得が下がる → 住民税の所得割額が下がる → 特例分の限度額(所得割額の20%)が下がる → 自己負担2,000円で収まるふるさと納税の額が下がる

という順で効いてきます。医療費控除を受ける年は、受けない年と同じ感覚で寄附すると、自己負担が2,000円を超える可能性があるということです。

実務上の順番

この関係から、その年の動き方が決まります。

  • 医療費がかさみそうだと年の途中でわかっている場合は、ふるさと納税の額を決める前に、医療費控除の見込み額を織り込んで上限を見直します。
  • 年末になって医療費が大きいことがわかった場合は、すでに寄附した分は動かせません。自己負担が2,000円を超える場合があることを織り込んで、確定申告をします。その際は、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算します。
  • どちらを取るか迷う、という判断は基本的に発生しません。 医療費控除とふるさと納税は同じ申告書のなかで両方受けられます。片方を諦める話ではなく、寄附の「額」を調整する話です。

控除上限そのものの考え方は、ふるさと納税の仕組みと控除上限の考え方で扱っています。

この年にやることの順番

  1. 医療費控除を受けるかどうかを決める(1年間に支払った医療費から保険金などで補填される金額を差し引いた額が、10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超えるかで判断)。
  2. 受けるなら、その年のふるさと納税はワンストップ特例の対象外になると理解する。申請書を出していた分も含めて、確定申告で申告する。
  3. 年の途中なら、医療費控除の見込みを織り込んで寄附額を見直す。
  4. 確定申告では、ふるさと納税を第二表の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄に必ず記載する。
  5. 寄附金の受領証、または特定事業者発行の年間寄附額証明書を添付・提示する。
  6. 医療費は「医療費控除の明細書」を作成して添付する。

まとめ

  • 所得税の医療費控除を受けるには確定申告書を提出します。受ける年は「確定申告をする人」になるので、ワンストップ特例の前提から外れます。
  • 申請書を出したあとでも確定申告で控除できますが、寄附金控除額の計算に含めなければ控除は受けられません。出したから大丈夫、とは考えないでください。確定申告をすると特例の申請は無効になるので、申請をした分も含めて計算します。
  • 書く場所は確定申告書第二表の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄です。国税庁が「必ず記載」としています。
  • 添付書類は、寄附金の受領証、または国税庁長官が指定した特定事業者が発行する年間寄附額証明書です。
  • 医療費控除で課税所得が下がると、住民税の所得割額が下がり、その20%である特例分の限度額も下がります。ふるさと納税の実質的な上限は、医療費控除を受ける年には下がります。
  • 片方を諦める話ではありません。両方受けられます。調整するのは寄附の額です。

申告書の作成を税理士に依頼するかどうかは、依頼内容と見積もりを確かめてから決めてください。

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ご利用にあたって:掲載内容は一般的な情報提供を目的としています。記載は2026年9月17日時点で国税庁などが公開していた情報にもとづくもので、税制は改正される場合があります。個別の申告内容については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

参考

記事の確認に用いた公開情報です。